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家族の対話約8分

親の仕事の話を聞いて残す 働いてきた日々の言葉の引き出し方

親が何十年も続けてきた仕事の話は、聞かなければそのまま消えてしまう言葉の宝庫です。会社勤めも、自営や農業も、家事も、仕事として聞いてみませんか。問いの順序、本人の言葉のままの残し方、名前を書くときの配慮、話したがらない親への入口まで、やさしくまとめました。

親の仕事の話は、なぜ聞いておきたい?

この記事を読むと、親が長く続けてきた仕事の話を、自慢話にも苦労話にも偏らせずに聞く順序と、聞いた言葉を本人の言葉のまま残す方法が分かります。結論から言うと、「最初の職場」から始めて時間の流れに沿って聞き、最後に「今の自分に残っているもの」を尋ねる。この順序を守るだけで、仕事の話は親の人生そのものを語る言葉になります。

親が一日の大半を過ごしてきたのは、職場や田畑、店先、そして台所でした。それなのに、子どもが知っている親の仕事は、肩書きや業種くらい、ということが少なくありません。毎朝何時に家を出て、どんな手つきで何をしていたのか。その日々の中にこそ、親らしさが詰まっています。

仕事の話は、昔話の中でも、親が具体的に語りやすい話題です。覚えた手順、使っていた道具、通った道。思い出の手がかりが多いぶん、一つの問いから話が広がりやすいのも特長です。

家事も子育ても、仕事として聞く

ここでいう仕事は、会社勤めだけではありません。自分で店を営んできた人、田畑を守ってきた人、職人として腕をふるってきた人。そして、家族の食事をつくり、家を整え、子どもを育ててきた人も、長い年月、仕事を続けてきた人です。

家事を中心に暮らしてきた親は、「私は仕事なんてしてこなかったから」と言うことがあります。そんなときは、「毎日のごはんの献立は、どうやって考えていたの?」「家計のやりくりで工夫したことは?」と、ほかの仕事と同じように尋ねてみてください。段取りや工夫の話は、どんな職場の話にも負けない、その人の知恵の記録です。

共働きで家の外と内の両方を担ってきた親なら、両方の話を聞いてかまいません。どちらか一方だけを仕事として扱わないことが、親の日々をまるごと残す第一歩になります。

問いの順序──最初の職場から、今の自分に残っているものまで

仕事の話は、時間の流れに沿って聞くと、親も思い出しやすくなります。おすすめの順序は次の六つです。

一つ目は「最初の職場」です。「初めて働いたのはどこだった?」「初日のことを覚えてる?」。始まりの記憶は、意外なほどはっきり残っていることがあります。二つ目は「覚えた最初の仕事」です。「最初に教わったことは何?」「誰に、どうやって教わったの?」と、手順や教わり方を聞きます。

三つ目は「一番長く続いたこと」です。毎日の決まった作業や、何年も受け持った役割を尋ねます。四つ目は「辞めた理由、あるいは続けた理由」です。転職や退職、家業を継いだこと、逆に一つの仕事を続けたこと。その決め手には、親の考え方がよく表れます。

五つ目は「誇りと後悔」です。「うまくいったと思えたのはどんなとき?」「やり直せるなら、どうしたい?」。最後の六つ目は「今の自分に残っているもの」です。「あの仕事で身についたことで、今も役に立っていることは?」。この問いで締めくくると、仕事の話が過去の出来事で終わらず、今の親につながります。

六つを一度に聞く必要はありません。一回に一つか二つ、親が話したい順に寄り道しながら進めれば十分です。

自慢話にも苦労話にも偏らせない聞き方

仕事の話は、手柄話ばかりになったり、つらかったことばかりになったりしがちです。どちらも大切な話ですが、片方だけだと、読み返したときに親の日々の手ざわりが伝わりにくくなります。

偏りをやわらげるには、「ふつうの一日」を尋ねるのが効果的です。「朝は何時に起きて、最初に何をしていた?」「お昼はどこで、誰と食べていた?」。特別な出来事ではなく、くり返していた毎日を聞くと、話が自然と落ち着きます。

手柄話が続いたら「そのとき、一緒に働いていた人はどうしていた?」と周りに目を向ける問いを、苦労話が続いたら「その中で、ほっとできた時間はあった?」と問いかけてみてください。話を止めずに、少しだけ角度を変えるのがコツです。

聞いた言葉は、本人の言葉のまま残す

書き留めるときは、親が話した言い回しをできるだけそのまま残します。「段取り八分」「現場は待ってくれない」。職場で使っていた言葉や口ぐせは、きれいな文章に直すと、その人らしさが消えてしまいます。

業界の言葉や道具の呼び名も、言い換えずに書いておきましょう。意味が分からないものは、言葉の横に「(親の説明:〜のこと)」と、聞いた側の補足として分けて添えます。親の言葉と、聞いた側の説明を混ぜないことが、あとで読む家族にとっての分かりやすさにつながります。

書き留める項目は、「いつごろの話か」「親の言葉そのもの」「聞いた側のひとこと」の三つに分けておくと、整理しやすくなります。

会社名や同僚の名前を書くときの配慮

仕事の話には、勤め先の名前や、上司や同僚、お客さんの名前が出てくることがあります。聞いている間は、そのまま書き留めておいてかまいません。ただし、本の形に残す前には、名前を出してよいかを本人に確かめておきましょう。

とくに、一緒に働いた人の個人名は、親本人の了解を取ってから残すのが安心です。親が迷うようなら、「先輩」「当時の工場長」「となりの席の人」のように、役割や関係で書く方法があります。それでも、話の温かさは十分に伝わります。

また、職場の内部のことや、取引先とのやりとりなど、外に出すべきでない話が出ることもあります。そうした部分は、家族の手元の記録にとどめ、本には入れない、という分け方もできます。何を残すかは、最後に本人と一緒に決めるのがいちばんです。

Q. 仕事の話を嫌がる親には、どう切り出せばいい?

「仕事の話なんて、面白くないよ」と、話したがらない親もいます。そんなときは、仕事そのものではなく、身の回りの「物」から入ってみてください。使っていた道具、通勤の道や乗っていた電車、毎日持って行った弁当。物の話は答えやすく、そこから自然に仕事の場面がよみがえることがあります。

古い写真が残っていれば、職場や作業着姿の一枚を手がかりにする方法もあります。写真からの聞き方は、「古い写真から、まだ言葉が取れる」の記事でも詳しくまとめています。

それでも乗り気でなければ、無理に続けなくて大丈夫です。別の日に、別の話題の中で、ふと仕事の話が出てくるのを待ちましょう。

Q. 専門的な話が多くて、内容がよく分からないときは?

分からないことは、そのまま「それはどういうこと?」と聞いてかまいません。親にとっては、自分の仕事を一から説明する機会になり、かえって話が弾むこともあります。

完全に理解できなくても、親の言葉どおりに書き留めておけば十分です。読む家族の中に、その意味が分かる人がいるかもしれません。分からないまま残すことも、立派な記録です。

Q. 辞めた理由が、つらい話だったら?

仕事を辞めた理由や、思うようにいかなかった時期の話には、今も胸の痛む記憶が含まれていることがあります。親が言葉を選んでいるようなら、深く尋ねずに「話してくれてありがとう」と受け止めるだけで十分です。

つらい話を本に残すかどうかは、本人が決めることです。「この話は、書いてもいい?」と一度確かめ、迷うようなら残さずにおきましょう。残さなかった話も、聞いたあなたの中には、親の大切な一部として残ります。

仕事の話から、引退後の時間の話へ

仕事の話をひととおり聞いたら、「仕事を離れてから、どんなふうに過ごしてきた?」と、引退後の時間へ話をつないでみてください。仕事で身についた習慣が、今の趣味や暮らし方に生きていることも多く、親の人生が一本の線でつながって見えてきます。

聞き取った言葉は、ノートに書きためておくのも一つの方法です。想い伝(おもいでん)は、いくつかの質問に答えるだけで、あなたが残した言葉を読みやすい一冊の本に整えるサービスです。書きかけの内容はお使いの端末に保存され、当社のサーバーには保存されないしくみです。

次に親と話すとき、ひとつだけ聞いてみてください。「初めて働いた日のこと、覚えてる?」。その一言から、親が働いてきた日々の言葉が、少しずつあふれてきます。

この記事について

想い伝 編集チーム(株式会社狼煙)。ご家族へ想いを残したい方に向けて、終活や家族の対話にまつわる話題を、やさしい言葉でまとめています。

公開日:

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