夫婦のあいだで言葉を残す 連れ合いへ、言いそびれた「ありがとう」の書き方
毎日顔を合わせている夫婦ほど、改めて言葉にする機会は少ないものです。親子とはちがう照れくささや、良い時ばかりではなかった年月も含めて、連れ合いへの言葉をどう書き、どう渡すか。三つの時間に分ける書き方から、ふたりで書き合う形まで、やさしくまとめました。
夫婦のあいだの言葉は、なぜ残りにくい?
この記事を読むと、連れ合いへの言葉を、照れくささに負けずに書き始める手順と、書いたものをどう渡すかの考え方が分かります。結論から言うと、一度に全部を書こうとせず、「出会い」「ふたりの日々」「これから」の三つの時間に分けて、一つずつ短く書く。そして、渡すかどうかは書き終えてから決める。この二つを守るだけで、ずっと言いそびれていた言葉が形になります。
親子のあいだには、誕生日や長寿のお祝いなど、手紙を書くきっかけが比較的多くあります。ところが夫婦は、毎日同じ家で顔を合わせているぶん、「言わなくても分かっているだろう」と過ぎてしまいがちです。長く連れ添うほど、改めて言葉にすることが照れくさくなる、という声もよく聞きます。
夫婦は、親子とちがって対等な関係です。感謝を伝えるときも、どちらかが上に立つような書き方にはしたくない。そのさじ加減が分からず、手が止まることもあるでしょう。けれど、「分かってくれているはず」と「言葉で受け取った」は、やはり別のものです。言葉にして手元に残れば、相手は何度でも読み返すことができます。
三つの時間に分けて書く──出会い、ふたりの日々、これから
連れ合いへの言葉は、時間の流れで三つに分けると書きやすくなります。
一つ目は「出会い」です。初めて会った日の印象、一緒に暮らそうと決めたときの気持ち。「あの日、駅で待っていてくれた姿を今も覚えている」のように、一つの場面を思い出すだけで十分です。何十年も前のことでも、意外なほど細かく覚えているものです。
二つ目は「ふたりの日々」です。ここでは、特別な旅行や大きな出来事よりも、くり返してきた毎日の場面を書いてみてください。朝のお茶をいれる順番、休みの日の散歩道、台所に並んで立った時間。ありふれた場面ほど、二人にしか分からない手ざわりが残っています。
三つ目は「これから」です。「また一緒に、あの町を歩きたい」「これからも、夕飯の味見役をお願いしたい」。大げさな誓いでなくてかまいません。小さな願いを一つ書くと、言葉が過去の思い出で終わらず、今日からの二人につながります。
三つを一度に書く必要はありません。今日は出会い、来週はふたりの日々、というように、一つの時間から始めて少しずつ書き足していけば十分です。
「ありがとう」を、具体的な場面に置きかえる
「いつもありがとう」という言葉は、うそではありません。ただ、あまりに見慣れた言葉なので、受け取る側の心に残りにくいことがあります。そこでおすすめしたいのが、ありがとうを一つの場面に置きかえることです。
たとえば、「仕事で帰りが遅かった冬、何も聞かずに温かいものを出してくれたこと」「子どもが熱を出した夜、交代で起きていてくれたこと」。いつ、どんな場面で、何に救われたのか。一つ書くだけで、ありがとうに重みが加わります。
場面が思い浮かばないときは、相手の手元を思い出してみてください。いつも使っている湯のみ、玄関でそろえてくれる靴、季節ごとに出してくれる衣替えの箱。物を手がかりにすると、その向こうにある相手の気づかいが見えてきます。
「ごめんね」を書きたい人もいるでしょう。書いてかまいません。そのときは、相手の振る舞いを責める形ではなく、「あのとき、私はこう思っていた」と、自分の側の気持ちとして書くのがコツです。昔の出来事の言い分を並べるのではなく、今の自分が伝えたいことに絞ると、相手も受け取りやすくなります。
呼び方は、ふだんの呼び方のままで大丈夫です。子どもが生まれてから「お父さん」「お母さん」と呼び合っている夫婦も多いでしょう。手紙のときだけ名前で呼んでみるのも一つですし、いつもの呼び方のほうが自分らしく書けるなら、それがいちばんです。
書くことと、渡すことは分けて考える
夫婦への言葉で手が止まる理由の一つは、「これを相手が読む」と思うと、身構えてしまうことです。そこで、まずは渡すかどうかを決めずに書いてみてください。書くことと渡すことは、別々に決めてかまいません。
渡すと決めたら、結婚記念日や誕生日、どちらかの退職や長寿のお祝いなど、二人の節目に合わせるのも一つの方法です。節目ごとの贈り方は、「人生の節目に、想いを贈るタイミングまとめ」の記事でも紹介しています。何でもない日に、そっと机に置いておくのも、夫婦ならではの渡し方です。
一緒に暮らしていると、書きかけのものを見られないかが気になるかもしれません。同じ端末や同じブラウザを二人で使っている場合は、書きかけが相手の目にふれることもあります。贈る日まで内緒にしておきたいときは、自分だけが使う端末で書くと安心です。
手渡すときに、その場で読んでもらう必要はありません。「あとで、ひとりのときに読んで」と添えて渡せば、読む側も照れずに受け取れます。読んだあとに何も言われなくても、気にしなくて大丈夫です。言葉は、相手の手元に残り続けます。
ふたりで書き合うという形もある
片方だけが書くのではなく、それぞれが相手へ向けて書き、同じ日に交換する、という形もあります。結婚記念日などに「今年は、お互いに手紙を書いてみない?」と声をかけてみるのも一つです。
書き合うときに大切なのは、比べないことです。一人は便せん何枚分も書き、もう一人は数行だけ、ということもあるでしょう。長さはその人の書き方のちがいであって、気持ちの大きさのちがいではありません。相手の文章に手を入れたり、言い回しを直したりもしないでおきましょう。
書き合う前に、何を書くかを軽くそろえておくのも一つの方法です。たとえば「出会いのころの思い出を一つ、これからの願いを一つ」と決めておくと、どちらも書きやすくなります。読み合ったとき、同じ日のことを相手がまったく別の角度から覚えていた、という発見もあるでしょう。
読み終えたあとの感想は、ひとことで十分です。「ありがとう、読んだよ」。それだけで、書いた側には伝わります。
Q. 照れくさくて、一行目がどうしても書けません
まずは、宛名と日付だけを書いてみてください。「〇〇へ」と書くだけで、手紙の形が整い、次の一行が出てきやすくなります。
それでも手が止まるときは、「これを書こうと思ったのは」という書き出しを使ってみましょう。きっかけを書くうちに、伝えたいことが自然と見えてきます。文章は話し言葉のままでかまいません。ふだん相手に話しかける口調で書くほうが、読む人にとってもその人らしく感じられます。
Q. 良い時ばかりではなかった夫婦でも、書いていい?
書いてかまいません。長い年月を一緒に過ごせば、けんかをした日も、口をきかなかった時期もあって当然です。言葉を残すために、二人の歴史をきれいな話に整える必要はありません。
つらかった時期に触れるなら、その時期を二人で越えてきたことに目を向けて書くと、言葉が前を向きます。どうしても書けない時期は、書かずにおいてかまいません。全部を書くことより、今の自分が本当に伝えたいことを一つ書くことのほうが、ずっと大切です。
Q. 子どもや孫に読まれても、かまわない内容にすべき?
宛先はあくまで連れ合い一人です。家族みんなに読まれることを前提に書くと、どうしても言葉がよそゆきになってしまいます。まずは相手一人に向けて、思うままに書いてみてください。
子どもや孫に見せるかどうかは、書き終えてから、できれば二人で相談して決めましょう。二人だけのものにしておく部分と、家族に残したい部分を分けておく、という考え方もあります。
また、書いているうちに、財産や手続きのことを書き添えたくなることがあるかもしれません。そうした事柄は、この手紙とは別に整理しておくのがおすすめです。想いを伝える言葉と、手続きのための書類とでは、役割がちがいます。
書いた言葉を、一冊にまとめるには
連れ合いへの言葉は、便せんやノートに書いて残すのも一つの方法です。想い伝(おもいでん)は、いくつかの質問に答えるだけで、あなたが残した言葉を読みやすい一冊の本に整えるサービスです。贈る相手として、夫婦・パートナーを選ぶこともできます。本になるのは、あなたが書いた言葉そのものです。
書きかけの内容はお使いの端末に保存され、当社のサーバーには保存されないしくみです。少しずつ書き足しながら、贈りたい日に合わせて仕上げることができます。
今日、ひとつだけ書いてみてください。「初めて会った日のこと」を一行だけ。その一行から、ふたりで重ねてきた日々の言葉が、少しずつ形になっていきます。
この記事について
想い伝 編集チーム(株式会社狼煙)。ご家族へ想いを残したい方に向けて、終活や家族の対話にまつわる話題を、やさしい言葉でまとめています。
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