「育ててくれてありがとう」を、親が元気なうちに渡す 子から親へ、感謝の言葉の書き方
「育ててくれてありがとう」は、いつか言おうと思ううちに、言いそびれやすい言葉です。大きすぎる感謝を小さな場面に分ける書き方、親の知らない自分を書き添えるコツ、照れくささの越え方、そして親が元気なうちに渡す意味まで、子から親へ言葉を贈るための手順をやさしくまとめました。
「育ててくれてありがとう」は、なぜ言いそびれるのか
この記事を読むと、親への感謝を、照れくささに負けずに言葉にする手順と、書いたものを親が元気なうちに渡す考え方が分かります。結論から言うと、「育ててくれて」という大きな感謝を一度に書こうとせず、小さな場面に分けて一つずつ書くこと。そして、特別な日を待ちすぎずに、渡せるときに渡すこと。この二つで、長く胸の内にあった言葉が形になります。
親への感謝は、多くの人が心のどこかで持っているものです。それでも、面と向かって伝える機会はあまりありません。結婚式で手紙を読む人もいますが、それ以外の場面では、「いつか、ちゃんと言おう」と思ったまま、年月が過ぎていくことがよくあります。
言いそびれる理由の一つは、感謝が大きすぎることです。何十年分の「ありがとう」を一枚の手紙に収めようとすると、何から書けばいいのか分からなくなります。もう一つは、親子だからこその照れくささです。小さいころから自分を知っている相手に、改まった言葉を向けるのは、思った以上に勇気がいるものです。
大きな感謝を、年代ごとの小さな場面に分ける
「育ててくれてありがとう」を書きやすくするには、自分の歩みを年代で区切り、それぞれから場面を一つずつ拾うのがおすすめです。
たとえば、幼いころ・学校に通っていたころ・家を出てから・そして今、の四つに分けてみます。幼いころなら「熱を出した夜、ずっとそばにいてくれたこと」。学校のころなら「部活の試合を、仕事の都合をつけて見に来てくれたこと」。家を出てからなら「引っ越しの日、何も言わずに段ボールを運んでくれたこと」。一つの場面を思い出すと、その前後の出来事も少しずつよみがえってきます。
場面は、大きな出来事でなくてかまいません。毎朝持たせてくれたお弁当、玄関で「行ってらっしゃい」と送り出してくれた声、帰りが遅い日に点いていた台所の明かり。くり返されてきた毎日の場面のほうが、親にとっても「そんなことを覚えていてくれたのか」と、心に残ることが多いものです。
四つ全部を埋める必要はありません。思い出せる年代から一つ書けば、それだけで一通の手紙になります。
「親の知らない自分」と「今だから分かること」を書き添える
場面を書いたら、そこにもう一言、親がまだ知らないあなたの気持ちを添えてみてください。感謝の手紙が、親にとって初めて聞く話を含んでいると、言葉の重みが変わります。
たとえば、「あのころは言えなかったけれど、お弁当のおかずを友だちにうらやましがられて、少し自慢だった」。「進路のことで意見がぶつかったとき、悔しくて口をきかなかったけれど、本当は心配してくれていると分かっていた」。親はその場面を覚えていても、そのとき子どもの側が何を思っていたかまでは、知らないことがほとんどです。
もう一つは、大人になった今だから分かることです。働くようになって、毎日家族のために台所に立ち続けることの大変さが分かった。誰かの世話をする立場になって、あのとき親がどんな気持ちで帰りを待っていたのかが分かった。「今になって分かった」という一文は、親にとって、何よりうれしい言葉の一つかもしれません。
厳しく叱られた思い出がある人もいるでしょう。その出来事を、無理にきれいな話に書きかえる必要はありません。「あのときはつらかったけれど、今はこう受け止めている」と、今の自分の受け止め方を書けば十分です。
照れくささを越える、短く書くための工夫
親への手紙は、長くなくてかまいません。便せん一枚、あるいは数行でも、具体的な場面が一つ入っていれば、気持ちは伝わります。長い文章を書こうとして手が止まるより、短くても書き上げるほうが、ずっと大切です。
書き出しで迷ったら、「急に手紙なんて、驚かせてごめんね」と、照れくささそのものを最初に書いてしまうのも一つの方法です。言いにくさを先に言葉にすると、そのあとが不思議と書きやすくなります。
両親がそろっている場合は、二人に一通で書くか、一人ずつ書くかでも迷うかもしれません。二人に一通なら、家族で過ごした思い出をまとめて書けます。一人ずつなら、父だけに、母だけに伝えたいことを書けます。どちらが正しいということはないので、書きやすいほうを選んでください。まず一人に書いてみて、もう一人にはあとから書く、という順番でもかまいません。
文章は、ふだん親と話すときの口調のままで大丈夫です。「お父さん」「お母さん」でも、家での呼び方でも、あなたらしい言葉で書いたほうが、親にはあなたの声で聞こえてきます。
親が元気なうちに渡すということ
感謝の言葉は、いつ渡してもかまいません。ただ、親が元気なうちに渡すことには、ひとつ大きな意味があります。それは、言葉が一方通行で終わらず、会話が返ってくることです。
手紙を読んだ親から、「そんなこと覚えていたの」「実はあのとき、こう思っていた」と、あなたの知らなかった話が返ってくることがあります。感謝を伝えたつもりが、親の側の思い出を聞くきっかけになる。元気なうちに渡すからこそ、こうしたやりとりが生まれます。親の話をもっと聞いてみたくなったら、「親が元気なうちに聞いておきたいこと」の記事も参考にしてください。
渡す日は、誕生日や母の日・父の日、帰省のときなど、きっかけのある日が渡しやすいでしょう。節目ごとの贈り方は、「人生の節目に、想いを贈るタイミングまとめ」の記事でも紹介しています。一方で、何でもない日に渡す手紙には、「特別な理由がなくても伝えたかった」という気持ちが、そのまま表れます。
手渡すときは、その場で読んでもらわなくてもかまいません。「あとで、ゆっくり読んで」と添えれば、親も照れずに受け取れます。離れて暮らしているなら、郵便で送るのも一つの方法です。
Q. 親との関係は、良い時ばかりではありませんでした。それでも書くべき?
書くかどうかは、あなたが決めてかまいません。親子の関係はさまざまで、「育ててくれてありがとう」という言葉が、すぐには出てこない人もいます。書かないという選択も、大切にされてよいものです。
もし書いてみようと思えたなら、全部を感謝で埋める必要はありません。「このことには、感謝している」と思える場面を一つだけ書く、という形もあります。伝えたいことだけを選んで書けば、それはあなたの本心からの言葉になります。
Q. 父か母の、どちらかがすでに亡くなっています
今も元気でいる親に向けて、書いてみてください。亡くなった親との思い出も、遠慮せずに書いてかまいません。「二人で、あの家を守ってくれてありがとう」のように、二人で育ててくれた日々への感謝として書くと、受け取る親にとっても、ともに過ごした年月を確かめる言葉になります。
亡くなった親に伝えたかった言葉が出てきたら、それも別に書き留めておくとよいでしょう。宛先がなくても、言葉にしておくことで、自分の中の気持ちが少し整理されることがあります。
Q. 渡しても、親が照れて何も言わなかったら?
気にしなくて大丈夫です。感謝の言葉を受け取ることに慣れていない親もいて、照れ隠しに話をそらしたり、黙ってしまったりすることがあります。
何も言われなくても、手紙は親の手元に残ります。何日もたってから、ふとした会話の中で「あの手紙、読んだよ」と言われることもあるでしょう。言葉は、渡した日で終わるものではありません。
書いた言葉を、一冊にまとめるには
親への言葉は、便せんやカードに書いて渡すのも一つの方法です。想い伝(おもいでん)は、いくつかの質問に答えるだけで、あなたが残した言葉を読みやすい一冊の本に整えるサービスです。思い出や感謝、親の知らないあなた自身のことなど、問いに答えながら書き進められます。本になるのは、あなたが書いた言葉そのものです。
書きかけの内容はお使いの端末に保存され、当社のサーバーには保存されないしくみです。今日は一つの場面だけ、次の休みにもう一つ、というように、少しずつ書き足しながら仕上げることができます。
今日、ひとつだけ書いてみてください。「子どものころ、いちばんうれしかったこと」を一行だけ。その一行から、言いそびれてきた「ありがとう」が、少しずつ言葉になっていきます。
この記事について
想い伝 編集チーム(株式会社狼煙)。ご家族へ想いを残したい方に向けて、終活や家族の対話にまつわる話題を、やさしい言葉でまとめています。
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