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家族の対話約8分

親が大切にしている物のいわれを、聞いて残す 誰からもらったか、いつから手元にあるか、手放さずにきた理由を、親の言葉で書き留める

「これ、いつから家にあるの?」。親が長く使ってきた腕時計、ずっと飾ってある置き物、しまったままの着物。親が大切にしている物には、それが手元に来たいきさつや、手放さずにきた理由があります。けれど、その話は、親の記憶の中にだけ残っていることがあります。答えやすい問いから始める聞き方、物が手元に来たいきさつの聞き方、使ってきた時間と手入れの聞き方、年末の片づけを聞くきっかけにするこつ、物の行方や亡くなった人の話への配慮まで、物にまつわる話を親の言葉で残す手順をまとめました。

物にまつわる話は、親が歩んできた時間の話でもある

この記事を読むと、親が大切にしている物のいわれを親に聞いて、親の言葉のまま書き留める手順が分かります。結論から言うと、「大事にしている物の話を聞かせて」と大きく聞こうとせず、「この時計、いつから使っているの?」のように、目の前の一つの物について一つのことだけを聞くこと。そして、聞いた話を、親の言葉とあなたの感想を並べて、一つの物につき一枚ずつ残すこと。この二つで、物にまつわる話が、家族で読み返せる言葉の記録になります。

長く使ってきた腕時計や万年筆、棚にずっと飾ってある置き物、たんすにしまってある着物、毎日使っている湯のみ。親が大切にしている物の話をすると、誰からもらったか、いつごろ手に入れたか、どうして手放さずにきたかといった、親が歩んできた時間の話も一緒に出てきます。

その物がいつから家にあるのかは、あなたも知っているかもしれません。けれど、手元に来るまでのいきさつや、その物にこめた気持ちは、親にしか分からないことがあります。この記事では、そうした話を親の言葉で聞いて残す方法をまとめます。物の片づけ方や、値打ちの調べ方を紹介するものではありません。

最初の問いは「これ、いつから使っているの?」くらいでいい

最初の問いは、目の前にある一つの物について、一つのことにしぼると答えやすくなります。「この時計、いつから使っているの?」「この置き物は、どこで買ったの?」「この湯のみ、ずっと同じものを使っているね」。このくらいの問いなら、親も、思い出したことをそのまま話せます。

答えが返ってきたら、そこから一つだけ問いを足してみてください。「就職したときに買った」と聞けば「自分で選んだの?」。「旅行先で見つけた」と聞けば「誰と行ったときのこと?」。一つの答えに一つの問いを重ねていくと、その物が親の暮らしの中にあった時間が見えてきます。

聞くきっかけは、ふだんの暮らしの中にあります。親がその物を手に取ったとき、手入れをしているとき、引き出しの奥から出てきたとき。「それ、前から気になっていたんだけど」と、ついでのように聞くくらいがちょうどよいでしょう。

物が手元に来たいきさつを聞く

物の話で聞きやすいのは、それが手元に来たいきさつです。「誰からもらったの?」「自分で買ったの?」「どこで見つけたの?」と聞いてみてください。結婚のときに贈られた、初めての給料で買った、親から譲り受けた。手元に来たいきさつには、そのころの親の暮らしや、まわりの人との間柄が表れていることがあります。

もらった物なら、贈ってくれた人のことも聞いておきたい記録です。どんな人だったのか、どんな言葉を添えてくれたのか、受け取ったときにどう感じたのか。物の話から、親にとって大切な人の話につながることもあります。

親の親、つまりあなたの祖父母から受け継いだ物であれば、祖父母の話を聞くきっかけにもなります。祖父母の話の聞き方は、「祖父母のことを、親に聞いて残す」の記事にまとめています。

使ってきた時間と、手入れのしかたを聞く

「どんなときに使っていたの?」「いちばんよく使ったのは、いつごろ?」「どこかへ持って行ったことはある?」。その物を使ってきた時間のことを聞くと、親の暮らしの場面が見えてきます。仕事に出る朝に身につけていた、お客さんが来たときだけ出していた、といった話が出てきたら、親が話したとおりに書き留めておきましょう。

長く使ってきた物には、手入れのしかたもあります。「どうやって手入れしているの?」「壊れたことはある?」と聞いてみてください。直しながら使い続けてきた話や、手入れのこつが出てくることがあります。手入れや繕いのこつの聞き方は、「親の手わざや暮らしのこつを、聞いて残す」の記事にまとめています。

物の呼び方や、親だけが使っている言い方があれば、言い換えずにそのまま書いておきましょう。親の言葉どおりに残すことで、あとから読んだときに、親の声が思い出しやすくなります。

手放さずにきた理由は、親が話せる分だけ聞く

ほかの物は手放しても、これだけは手元に置いてきた、という物があるかもしれません。「どうして、これはずっと取ってあるの?」と聞いてみると、親の気持ちが言葉になることがあります。

ただ、手放さずにきた理由は、親自身もうまく言葉にできないことがあります。「なんとなく」「捨てられなくて」という答えが返ってきても、それで十分です。その一言を、そのまま書き留めておきましょう。理由を言葉にしてもらおうと、問いを重ねる必要はありません。

使わなくなった物を手元に置いておく親の気持ちを、聞き手のほうから「もう使わないでしょう」と決めつけないことも大切です。聞くのは、物を減らすためではなく、物にまつわる話を残すためです。

年末の片づけで出てきた物を、話の手がかりにする

年末の大掃除や片づけのころは、ふだんしまってある物が出てきやすい時期です。押し入れの奥の箱、引き出しにしまったままの小物、棚の上に置いたままの物。「これは何?」と一声かけると、思いがけない話が始まることがあります。

片づけを手伝いながら聞くときは、物を手放すかどうかの話と、物にまつわる話を分けておくと聞きやすくなります。片づけを進めながら想いも残す考え方は、「実家じまい・生前整理、モノの片づけと『想い』の両立」の記事にまとめています。

親が「話すことなんて何もない」と言うときも、目の前の物は話の手がかりになります。持ち物から話を聞く進め方は、「親が『話すことなんて何もない』と言うとき、どう聞く?」の記事も参考になります。

物の行方や、亡くなった人の話への配慮

大切にしている物の話は、どの親にとっても楽しい話とは限りません。贈ってくれた人や、一緒に使っていた家族が、今はもういないこともあります。手放さなければならなかった物の話が出てくることもあるでしょう。

この記事の聞き方は、そうしたいきさつを確かめるためのものではありません。聞き手のほうから細かく聞き出そうとしないでください。親が話しはじめたことを、話せる分だけ聞いておけば十分です。話の途中で親が言葉に詰まったり、話題を変えたりしたら、それ以上は深追いしないでください。「話してくれてありがとう」と伝えて、別の話に移れば十分です。

その物をこの先どうしたいかは、親が決めることです。聞き手のほうから、物の行き先を決めるような問いをしないでください。親のほうから「これは、あの子に渡したい」といった話が出たら、親の言葉で書き留めておきましょう。ただ、聞き書きの記録は、物の受け継ぎ方を決める書類ではありません。気持ちを残すことと、取り決めを残すことの違いは、「遺言書と『想いを残す』は、どう違う?」の記事にまとめています。

物にまつわる話の中に、贈ってくれた人など、家族以外の人の暮らしや事情にかかわることが出てくることもあります。そうした話は、家族の中で読む記録にとどめ、書き方に気をつけておきましょう。

一つの物を一枚にまとめる、書き留め方の形

聞いた話は、一つの物につき一枚にまとめておくと、あとで読み返しやすくなります。形はノートでも、スマホのメモでもかまいません。次の五つの欄を目安にしてみてください。

一つ目は「どんな物か」です。「父の腕時計」「居間の置き物」のように、短く書きます。二つ目は「いつから手元にあるか」。「結婚したころから」「わたしが生まれる前から」のように、親が話したとおりに書けば十分です。三つ目は「話してくれた人」。父か母か、ほかの家族かを書いておきます。四つ目は「親が言った一言」で、ここはできるだけ親の言葉どおりに残します。「これは、初めての給料で買ったんだよ」のような一言が出てきたら、ここに書いておきましょう。五つ目が「聞いた日」です。

その物の写真を一枚撮って、紙と一緒にしておくのもよい方法です。撮るときは、「写真に撮ってもいい?」と一声かけてからにしましょう。

書き終えたら、いちばん下に、聞いたあなたの感想を一行添えてください。「この時計を、父が初めての給料で買ったとは知らなかった」「母が、この湯のみの話をうれしそうにしていた」。親の言葉とあなたの気持ちが一枚に並ぶと、物にまつわる話が、家族の記録になります。

全部の欄が埋まらなくても大丈夫です。空いた欄は、次に聞く問いの手がかりになります。

Q. 親が「大切にしている物なんてない」と言います

大切にしている物を聞かれても、すぐには思いつかない親もいます。そのときは、「大切な物」と言わずに聞いてみてください。「いちばん長く使っている物は?」「毎日使っている物はある?」「引っ越しのときも持ってきた物はある?」。

毎日使っている茶わんや、いつも座る椅子のような、ありふれた物にも、手元に来たいきさつがあります。話が出てこないときは、無理に続けなくてかまいません。その日は、親が話したいことを聞く日にしても十分です。

Q. 物のいきさつについて、親と自分の覚えていることが違います

同じ物のことでも、親とあなたで覚えていることが違うことがあります。いつから家にあったか、誰からもらったか。どちらが正しいかを決めなくてかまいません。

親の話は親の言葉で、あなたの覚えていることはあなたの言葉で、同じ紙に並べて書いておきましょう。違いをそのまま残す考え方は、「『それ、違うと思う』と言いたくなったら──記憶違いのまま残す、という選び方」の記事にまとめています。

Q. その物が、もう手元に残っていません

なくしてしまった物や、手放した物、壊れてしまった物の話も、聞いて残すことができます。「前に使っていた、あの時計はどうしたの?」「昔、大事にしていた物はある?」と聞いてみてください。物がなくても、親の言葉で書き留めておけば、それも一つの記録になります。

その物が写っている写真が残っていれば、それを見ながら聞くのも一つの方法です。写真から話を聞く方法は、「古い写真から、まだ言葉が取れる」の記事にまとめています。手放したいきさつがつらいものであれば、聞き手のほうから深く尋ねないでください。

物にまつわる話を、一冊の言葉にまとめるには

聞いた話や、親が口にした一言は、ノートやファイルにまとめておくのも一つの方法です。想い伝(おもいでん)は、いくつかの質問に答えるだけで、あなたが残した言葉を読みやすい一冊の本に整えるサービスです。家族の思い出や親への感謝などを、問いに答えながら書き進められます。本になるのは、あなたが書いた言葉そのものです。

書きかけの内容はお使いの端末に保存され、当社のサーバーには保存されないしくみです。今日は時計の話だけ、次に会ったときに湯のみの話を、というように、少しずつ書き足しながら仕上げることができます。

今日、ひとつだけ書いてみてください。「親が長く使っている物」の名前を一行だけ。分からなければ、それが親に聞く最初の質問になります。その一行から、あなたの知らなかった、物にまつわる親の時間が、家族の言葉として残り始めます。

この記事について

想い伝 編集チーム(株式会社狼煙)。ご家族へ想いを残したい方に向けて、終活や家族の対話にまつわる話題を、やさしい言葉でまとめています。

公開日:

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