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家族の対話約8分

親の手わざや暮らしのこつを、聞いて残す 繕い物、植木の世話、片づけのこつを、親の言葉で書き留める

「このボタン、どうやって付けているの?」。親が毎日の暮らしの中で続けてきた繕い物や植木の世話、片づけには、それぞれに小さなこつがあります。けれど、こうしたこつは手で覚えていることが多く、書き残されることはあまりありません。答えやすい問いから始める聞き方、一緒に手を動かしながら聞くこつ、誰から教わったかの聞き方、体や安全に関わる知恵の扱い方、手が思うように動かなくなった親への配慮まで、親の手わざを親の言葉で残す手順をまとめました。

手で覚えているこつは、聞かなければ言葉にならない

この記事を読むと、親が続けてきた手わざや暮らしのこつを聞いて、親の言葉のまま書き留める手順が分かります。結論から言うと、「何か得意なことはある?」と大きく聞こうとせず、「ボタンは、どうやって付けているの?」のように、一つの作業だけを聞くこと。そして、聞いた話を、親の言葉とあなたの感想を並べて、一つのこつにつき一枚ずつ残すこと。この二つで、親の手が覚えてきたことが、家族で読み返せる言葉の記録になります。

繕い物、植木の世話、洗濯物のたたみ方、ふろしきの包み方、部屋の片づけ方。親が毎日の暮らしの中で続けてきた作業には、それぞれに小さなこつがあります。けれど、こうしたこつは手で覚えていることが多く、本人も言葉にしたことがないかもしれません。「見ていれば分かる」と思っているうちに、聞く機会を逃してしまうこともあります。

この記事で聞くのは、仕事として身につけた技ではなく、家の中や身の回りで続けてきた手わざです。親の仕事の話を聞きたいときは「親の仕事の話を聞いて残す」の記事に、台所の料理を残したいときは「親の料理と『家の味』を、言葉と一緒に残す」の記事にまとめています。

最初の問いは「ボタンは、どうやって付けているの?」くらいでいい

最初の問いは、一つの作業にしぼると答えやすくなります。「ボタンは、どうやって付けているの?」「この植木には、いつ水をやっている?」「洗濯物は、どうやってたたんでいる?」。このくらいの問いなら、親も、ふだんしていることをそのまま話せます。

答えが返ってきたら、そこから一つだけ問いを足してみてください。「糸は二本どりにする」と聞けば「どうして二本なの?」。「水は朝にやる」と聞けば「夏と冬で変えている?」。一つの答えに一つの問いを重ねていくと、作業の手順の奥にある、親なりの考え方が見えてきます。

聞くきっかけは、ふだんの暮らしの中にあります。服のボタンが取れたとき、ベランダの植木が花をつけたとき、年末の大掃除で棚を片づけるとき。「これ、どうやるの?」と、教わるつもりで聞くくらいがちょうどよいでしょう。

一緒に手を動かしながら聞く

手わざの話は、座って聞くより、一緒に手を動かしながら聞くほうが言葉になりやすいことがあります。帰省したときや、年末の片づけのときに、「ちょっとやって見せて」と頼んでみてください。親の手元を見ながら「いま、どこに気をつけている?」と聞くと、ふだんは言葉にしないこつが出てくることがあります。

手順を書き留めるときは、親が口にした言い方をそのまま残しておきましょう。「このくらい」「ちょっと手前で止める」のような言い方は、あいまいに見えても、親がその作業をどう感じ取ってきたかを伝える言葉です。手元の写真を撮っておくと、あとで言葉と合わせて読み返しやすくなります。写真を撮るときは、親に一声かけてからにしましょう。

高い所での作業や、刃物や火を使う作業を、親に無理にしてもらう必要はありません。手を動かすのがつらそうなときは、やって見せてもらうのをやめて、話を聞くだけで十分です。帰省のときの聞き方全体については、「年末年始の帰省で、親の話をどう聞き、どう残すか」の記事にまとめています。

そのこつを、誰から、いつ教わったかを聞く

こつの中身を聞いたら、「それは誰に教わったの?」「いつごろから、そうしている?」と聞いてみてください。親が自分の親から教わったこと、近所の人に教わったこと、何度もやり直しながら自分で見つけたこと。こつの出どころには、親が歩いてきた暮らしが表れています。

「最初はうまくいかなかったことはある?」と聞くのもよいでしょう。うまくいかなかった話や、工夫を重ねた話は、手順だけでは伝わらない、親の根気や考え方を伝えてくれます。

道具の話が出てきたら、その道具にまつわる思い出も聞いてみてください。長く使ってきた裁縫箱や、手入れを続けてきた道具には、それだけの時間が重なっています。道具そのものが暮らしの中でどう変わってきたかを聞きたくなったら、「親が見てきた暮らしの移り変わりを、聞いて残す」の記事の聞き方も参考になります。

季節ごとの手しごとを聞く

暮らしのこつの中には、季節ごとに一度しかしない作業もあります。「衣替えのとき、何に気をつけていた?」「年末の大掃除は、どこから始めていた?」「寒くなる前に、家でしていた支度はある?」と聞いてみてください。

一年に一度の作業は、親が毎年くり返してきた分だけ、決まった順番やこつが積み重なっていることがあります。「その順番には、何か理由があるの?」と一つ聞き足すと、親なりの段取りの考え方が見えてきます。

年末は、こうした季節の手しごとを、そばで見ながら聞ける時期でもあります。大掃除や年越しの支度を手伝いながら、「いつもどうしていた?」と聞いてみてください。

親のやり方と今のやり方が違っても、そのまま書き留める

親のこつを聞いていると、今よく見かけるやり方と違うことがあるかもしれません。それでも、聞き手のほうから「今はこうするんだよ」と直そうとせず、親のやり方をそのまま書き留めておきましょう。この記録は、正しい手順を決めるためのものではなく、親がどうしてきたかを残すためのものです。

ただ、体の手当てや薬、電気やガスの扱いなど、体や安全に関わる知恵は、記録として残すにとどめておくのがよいでしょう。書き留めた紙の端に「親から聞いたやり方」と一言添えておくと、あとで読む家族も、記録として受け取りやすくなります。実際に試す前には、今の取扱説明書や、身近な専門の窓口で確かめてください。

「これは、もうやらなくなった」というこつも、大切な記録です。続けなくなった理由を聞くと、親の暮らしの変わり目が見えてくることがあります。

手が思うように動かなくなった話は、親が話せる分だけでいい

手わざの話は、どの親にとっても楽しい話とは限りません。年を重ねて、前のように細かい作業ができなくなった人もいるでしょう。得意だったことができなくなった話は、本人にとってつらいことがあります。

この記事の聞き方は、親が今どれだけできるかを確かめるためのものではありません。「前はできたのにね」と、聞き手のほうから口にしないようにしましょう。今は手を動かさなくても、「どうやっていたか」を話してもらうだけで、こつは十分に残せます。

話の途中で親が言葉に詰まったり、話題を変えたりしたら、それ以上は深追いしないでください。「教えてくれてありがとう」と伝えて、別の話に移れば十分です。親が話したいと思ったときに、また聞けばよいのです。

こつを教えてくれた人が、もういないこともあるでしょう。その人の話が出てきたときも、親が話せる分だけを聞いておきましょう。聞くことが、あなたにとって苦しい場合は、聞かないという選び方もあります。

一つのこつを一枚にまとめる、書き留め方の形

聞いた話は、一つのこつにつき一枚にまとめておくと、あとで読み返しやすくなります。形はノートでも、スマホのメモでもかまいません。次の五つの欄を目安にしてみてください。

一つ目は「何のこつか」です。「ボタンの付け方」「植木の水やり」のように、短く書きます。二つ目は「誰から教わったか」。「母の母から」「自分で工夫した」のように、親が話したとおりに書けば十分です。三つ目は「話してくれた人」。父か母か、ほかの家族かを書いておきます。四つ目は「親が言った一言」で、ここはできるだけ親の言葉どおりに残します。「このくらい」「ちょっと手前で」のような言い方が出てきたら、ここに書いておきましょう。五つ目が「聞いた日」です。

書き終えたら、いちばん下に、聞いたあなたの感想を一行添えてください。「ボタン付けにこんなこつがあったと初めて知った」「母が、植木の話をうれしそうにしていた」。親のこつとあなたの気持ちが一枚に並ぶと、手わざの話が、家族の記録になります。

全部の欄が埋まらなくても大丈夫です。空いた欄は、次に聞く問いの手がかりになります。

Q. 「このくらい」「適当に」としか言ってくれません

手で覚えたこつは、言葉にすると「このくらい」「適当に」になってしまうことがよくあります。それを無理に数字や決まった手順に言い換えなくてかまいません。親がそう言ったことを、そのまま書き留めておきましょう。

もう少し聞きたいときは、「どうなったら、ちょうどいいと分かるの?」と、目や手ざわりで分かることを聞いてみてください。「色が変わったら」「手に重さを感じたら」のような答えが返ってくることがあります。親がよく口にする言い方をまとめて残す方法は、「親の口ぐせや好きな言葉を残したい。どう書き留める?」の記事にまとめています。

Q. 親が「たいしたことはしていない」と言います

毎日続けてきた作業は、本人にとっては当たり前になっていて、こつだと思っていないことがあります。親が「たいしたことはしていない」と言うときは、こつを聞くのをやめて、目の前の作業を一つ指して聞いてみてください。「この結び方は、どうやるの?」「この棚は、どういう順に片づけている?」。目の前の物から聞くと、話しやすくなることがあります。

それでも話が出てこないときは、無理に続けなくてかまいません。その日は手わざの話にこだわらず、親が話したいことを聞く日にしても十分です。

Q. 聞いたこつを、自分でもやってみたいです

親から聞いたこつを、自分でもやってみたいと思うことがあるかもしれません。そのときは、親にそばで見てもらいながら、一度やってみるのもよい方法です。うまくいかなかったところを親に直してもらうと、聞いただけでは分からなかったこつが、もう一つ見つかることがあります。

やってみた日のことも、一枚の紙に書き添えておきましょう。「教わったとおりにやったら、思ったより難しかった」。親の言葉の横に、あなたが試した記録が並ぶと、こつが家族の中で受け渡されていく様子が残ります。

手わざや暮らしのこつの話を、一冊の言葉にまとめるには

聞いた話や、親が口にした一言は、ノートやファイルにまとめておくのも一つの方法です。想い伝(おもいでん)は、いくつかの質問に答えるだけで、あなたが残した言葉を読みやすい一冊の本に整えるサービスです。家族の思い出や親への感謝などを、問いに答えながら書き進められます。本になるのは、あなたが書いた言葉そのものです。

書きかけの内容はお使いの端末に保存され、当社のサーバーには保存されないしくみです。今日はボタン付けの話だけ、次に会ったときに植木の世話の話を、というように、少しずつ書き足しながら仕上げることができます。

今日、ひとつだけ書いてみてください。「親がふだん手を動かしてしていること」の名前を一行だけ。分からなければ、それが親に聞く最初の質問になります。その一行から、あなたの知らなかった、親の手が覚えてきたこつが、家族の言葉として残り始めます。

この記事について

想い伝 編集チーム(株式会社狼煙)。ご家族へ想いを残したい方に向けて、終活や家族の対話にまつわる話題を、やさしい言葉でまとめています。

公開日:

あなたの想いも、一冊の本に

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