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家族の対話約8分

親の料理と「家の味」を、言葉と一緒に残す 作り方だけでなく、台所の思い出を聞く

「いつもの煮物、どうやって作っていたの?」。親の料理を聞くことは、作り方だけでなく、その味にまつわる思い出を聞く入口にもなります。分量を「適当」と言われたときの聞き方、台所で一緒に作る残し方、作り方に添える一言まで、家の味を言葉で残す手順をまとめました。

「家の味」は、聞いておかないと残りにくい

この記事を読むと、親の料理を手がかりに、作り方とその味にまつわる思い出を一緒に聞いて残す手順が分かります。結論から言うと、残したい料理を一つに絞ること。そして、材料や手順だけでなく、「いつ作っていたか」「誰が好きだったか」という話をセットで聞くこと。この二つで、家の味は、作り方のメモから、家族の記憶を伝える言葉に変わります。

家で長く作られてきた料理の多くは、どこにも書かれていません。親が何十年も、目分量と手の感覚で作ってきたものだからです。毎日食べてきた子どものほうが、かえって作り方を知らない、ということもよくあります。

料理の話は、親の話を聞く入口としても向いています。「これまでの人生を聞かせて」と改まって頼むと、親も構えてしまいがちです。けれど、「あの煮物の作り方を教えて」なら、気負わずに話し始められます。料理には、作り続けてきた年月や、食卓を囲んだ家族、季節の行事が、自然と結びついているからです。

まず、残したい料理を一つ選ぶ

最初に、どの料理を聞くかを決めます。候補は、毎日の食卓に並んだおかず、お正月や誕生日など行事のときの料理、お弁当の定番、親が「これは得意」と言っていたものなどです。きょうだいや家族に「思い出す料理は?」と聞いてみると、自分では忘れていた一品が出てくることもあります。

候補が挙がったら、まずは一つに絞りましょう。全部を一度に聞こうとすると、どれも途中で終わってしまいがちです。選ぶときは、「いちばん、また食べたいもの」を基準にするのがおすすめです。聞く側の気持ちが入っている料理ほど、話も深くなります。反対に、子どものころは苦手だった料理を選ぶのも一つの方法です。「あのころは食べられなかったけれど、今はおいしいと思う」という一言は、親にとって思いがけない、うれしい話になることがあります。

親自身が「これは、自分の母から教わった」と言う料理があれば、ぜひ候補に入れてください。その一品には、親の親の代からの話が重なっています。一つの料理から、三つの世代の思い出が聞けることもあります。

「適当よ」と言われたときの聞き方

親に分量を聞くと、「適当よ」「味を見ながら」と返ってくることがよくあります。それは、長年の手の感覚で作ってきた証です。無理に正確な数字を聞き出そうとしなくてかまいません。

数字のかわりに、ふだん使っている道具で聞いてみてください。「いつものお玉で何杯くらい?」「このスプーンで?」と聞けば、答えやすくなります。見た目や音で聞くのも一つの方法です。「どのくらいの色になったら火を止めるの?」「煮汁がどこまで減ったら?」という聞き方なら、親の頭の中にある目安が言葉になって出てきます。

聞いた言い方は、できるだけそのまま書き留めておきましょう。「しょうゆは、鍋のふちをひと回り」「砂糖は、ちょっと多いかなと思うくらい」。こうした言い回しには、親の口調がそのまま残ります。あとで数字に直したくなったら、消さずに、「自分で量ってみたら大さじ二くらい」と横に書き添えれば十分です。

台所に並んで、一緒に作りながら聞く

いちばん確かな残し方は、一緒に作ることです。手元を見ながら聞くと、言葉にしにくいコツも分かります。帰省のときなどに、「一品だけ、一緒に作らせて」と頼んでみてください。親が主役で、あなたは手伝い役。それくらいの距離感のほうが、親も自然に話せます。

作っている最中は手がふさがるので、細かいメモはあとで構いません。気づいたことだけを短く書いておき、手順は食事のあとに親と一緒に確かめながらまとめると、聞きもらしが減ります。手元の写真を撮るときは、ひと言断ってからにしましょう。

台所で手を動かしていると、思い出が口をついて出てくることがあります。「昔は、この鍋じゃなかった」「おばあちゃんのは、もっと甘かった」。そんな一言は、料理の話から親自身の話へ広がる入口です。その場で深追いせず、短く書き留めておくだけでかまいません。

作り終えたら、できあがった料理を一緒に食べながら、続きを聞くのもよい時間です。「昔は、これを何人分作っていたの?」と聞くと、家族がにぎやかだったころの食卓の話が出てくることもあります。

離れて暮らしているなら、電話で聞きながら、自分の台所で作ってみる方法もあります。電話での聞き方は、「離れて暮らす親と、電話でどこまで聞ける?」の記事でも紹介しています。

作り方の横に、その料理の「思い出」を書き添える

作り方だけなら、ノートに書けば残ります。家の味を残すなら、そこに言葉を添えることが大切です。作り方を聞き終えたら、続けて次のようなことを聞いてみてください。この料理は、いつ、誰から教わったのか。どんな日に作ることが多かったのか。家族の中で、誰がいちばん好きだったのか。作るとき、何に気をつけていたのか。

こうした問いからは、子どもの知らなかった親の事情や気持ちが見えてくることがあります。「忙しかったから、これなら早くできた」という本音や、「お父さんが好きだったから、よく作った」という家族への思いやりです。毎日の食卓の向こうにあった親の工夫は、聞かなければ分からないままです。

あなた自身の思い出も、横に書き添えてください。「遠足の日のお弁当には、いつもこれが入っていた」「部活から帰ると、この匂いがしていた」。作り方と、親の話と、あなたの記憶。この三つがそろうと、家の味が、家族の記録になります。ふだんの一言を拾う書き留め方は、「親の口ぐせや好きな言葉を残したい。どう書き留める?」の記事も参考にしてください。

一品を一枚にまとめる、書き留め方の形

聞いた内容は、一つの料理につき一枚にまとめておくと、あとで読み返しやすくなります。形はノートでも、スマホのメモでもかまいません。次の六つの欄を目安にしてみてください。

一つ目は「料理の名前」です。家での呼び方があれば、それをそのまま使います。「お母さんの茶色い煮物」のような呼び名も、立派な名前です。二つ目は「誰から、いつ教わったか」。三つ目は「材料と道具」で、分量は親の言い方のまま書きます。四つ目は「作る順番」。五つ目は「親が言っていたコツ」で、ここはできるだけ親の言葉どおりに残します。六つ目が「この料理の思い出」で、親の話とあなたの記憶の両方を書きます。

全部の欄が埋まらなくても大丈夫です。作り方がはっきりしなくても、思い出の欄だけで一枚になります。反対に、作り方だけ先に書いて、思い出はあとから足していくこともできます。空いた欄は、次に親と話すときの質問の手がかりになります。

一枚書けたら、親に見せて確かめてもらうのもおすすめです。「ここ、合ってる?」と聞くと、「本当は、もうひと手間あってね」と、新しい話が出てくることがあります。書いたものを間に置くと、話が続きやすくなります。

Q. 親が「たいしたものは作っていない」と言うときは?

毎日の料理を、特別なものだと思っていない親は少なくありません。そんなときは、「あれがまた食べたいから、作り方を知っておきたい」と、あなたの側の理由で頼んでみてください。教える相手がいると分かると、話しやすくなる親も多いものです。

それでも話が進まないときは、台所の道具や、使い込んだ器を手がかりにするのも一つの方法です。持ち物や場所から話を聞く進め方は、「親が『話すことなんて何もない』と言うとき、どう聞く?」の記事で紹介しています。

Q. 聞いたとおりに作っても、同じ味になりません

よくあることです。使う鍋も、火加減も、手に入る材料も、親の台所とは少しずつ違います。同じ味にならなくても、近づけようとして作ってみたこと自体に意味があります。

うまくいかなかったことを親に話すと、「それは、先に煮汁を作っておかないと」と、最初には出てこなかったコツが返ってくることがあります。作ってみて、また聞く。そのやりとりも、家の味を受け継ぐ時間の一部です。

Q. 親が台所に立つことが少なくなりました

一緒に作れなくても、話は聞けます。「あの料理、どうやって作っていたの?」と聞いて、言葉だけで残してもかまいません。むかしの写真や、使っていた鍋や器を見ながら話すと、手順や、そのころの食卓の様子を思い出しやすくなります。

大切なのは、親に無理をさせないことです。正確な作り方がそろわなくても、「こんな味だった」「こんなふうに作っていた」という記憶が残れば十分です。年末年始など家族が集まる機会に聞く工夫は、「年末年始の帰省で、親の話をどう聞き、どう残すか」の記事にまとめています。

家の味の思い出を、一冊の言葉にまとめるには

聞いた作り方と思い出は、ノートやカードにまとめておくのも一つの方法です。想い伝(おもいでん)は、いくつかの質問に答えるだけで、あなたが残した言葉を読みやすい一冊の本に整えるサービスです。家族の思い出や親への感謝などを、問いに答えながら書き進められます。本になるのは、あなたが書いた言葉そのものです。

書きかけの内容はお使いの端末に保存され、当社のサーバーには保存されないしくみです。今日は一つの料理の話だけ、次の帰省でもう一つ、というように、少しずつ書き足しながら仕上げることができます。

今日、ひとつだけ書いてみてください。「いちばん好きだった親の料理」の名前を一行だけ。その一行から、台所で聞けるはずの話が、少しずつ見えてきます。

この記事について

想い伝 編集チーム(株式会社狼煙)。ご家族へ想いを残したい方に向けて、終活や家族の対話にまつわる話題を、やさしい言葉でまとめています。

公開日:

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